今年、私は75歳になった。
一昨年夫を亡くしたこともあって、自分の身辺を少し片付けておこうと思い立った。
昨年の秋、32年も放ってあった神奈川の古い家の物置の荷物を仕分けはじめていた。「いとしのリトル・ジョン・ジョン」の原稿は古ぼけたスチールデスクの引き出しからぽろっと出てきた。
長い年月を経て、原稿用紙は赤茶けていた。物語の半分はタイプライターの用紙に、なぜか虫眼鏡で見なければ読めないほど小さな文字で書き綴られ、ペン書きのさし絵までいくつか入っていた。
それはまぎれもなく私の字であった。
手にとって読みはじめると、懐かしさで胸がおどり、痛くなるほどであった。思いがけないことから、1歳半から6歳までの5人の子どものいるクリスト家といきなり暮らすことになった日々の光景が目に浮かんだ。1960年の夏のことであった。
探しだした古いアルバムは、さわるとページがパラパラになった。その中に、リトル・ジョン・ジョンをはじめ5人の子どもたちのうすぼけた写真が数枚見つかった。私が慣れない手つきでお風呂に入れた子どもたちのはしゃぐ声、さわやかなからだのにおいまで思い出された。原稿を繰り返し読むうちに、47年も前の出来事は驚くほど鮮やかな映像のようになっていった。
私と夫、辻宏は1960年4月に結婚し、8月に2週間余の船旅でサンフランシスコに上陸した。夫が日本人として初めてパイプオルガン建造技術を学ぶための旅であり、2人にとっての新婚旅行でもあった。その旅で、リトル・ジョン・ジョンとその家族との出会いがあった。
あれから半世紀近い年月を共に歩んだ夫を神の元に見送って、私は独りになった。
そして、自分でも忘れていた昔の原稿を思いがけなく再び手にとることになり、こうしてささやかな本にできたことを、何か不思議なめぐり合わせのように思っている。
(本編「はじめに」より)
辻 紀子 (つじ としこ)
日本キリスト教団蘇原教会会員、辻オルガン代表、翻訳家
1995年 北海道教育大学英文科卒業
1955〜58年 アメリカ カリフォルニア大学バークレー校に留学
帰国後、翻訳を始める
1960〜63年 夫、辻宏(オルガン建造家)と渡米
ヨーロッパをまわって帰国後、パイプオルガン工房
「辻オルガン」を設立、現在に至る
この間、オルガン音楽を通して日本と海外のオルガ
ニストの交流、研究の機会をつくるために努力している
近年は「いのち」をテーマに翻訳、講演、朗読している
-訳書-
「1ダースのもらいっ子…どの子も神の子、大切ないのち」 (ヘレン・ドス著)
「いこいのみぎわ」 (A・ドーフラー著)
「真実の結婚を求めて」 (ウオルター・トロビッシュ著)
「ジーザス」 (ブルース・マルチアーノ著)
「若い父親のための10章」 (ジョン・M・ドレッシャー著)
「神、ともにいまして 「天国」 (ジョニー・エレクソン・タダ著)
「シャロンの小さなバラ」 (ナン・ガーリー著)
「3本の木」 (アンジェラ・E・ハント著)
「とっておきのさんびか物語」 「とっておきのクリスマスキャロル」
(ボビー・ヴォルゲマス/ジョニー・エレクソン・タダ著)
「こねこのクリスマス」 (ターシャ・テューダー著)
古ぼけたデスクの引き出しから出てきた
トコの大切な大切な思い出
そこには「愛」が記され、数十年後
再びトコに「愛」をくれた
定価(本体1,000円+税)
「いきなり5人のママになった!」の本の売り上げの一部(一冊につき300円)を筋萎縮性側索硬化症の研究のために寄付しております。
発売以降今までに15万円の寄付ができました。
多くの方々の協力により寄付ができたことをこの場をお借りしてお礼申し上げます。
この寄付を今後とも続けて参りたいと思います。
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翻訳の仕事をするようになって50年。
トコが初めて自分の本を出しました!!(*^v^*)
古ぼけたデスクの引き出しから出てきた
トコの大切な大切な思い出
そこには「愛」が記され、数十年後
再びトコに「愛」をくれた